雑記2014

「在宅勤務が会社を救う」かもしれないが、在宅勤務によって社員は救われない

投稿日:2014年2月24日

こないだ本屋で立ち読みした本と、今朝以下の記事を目にして、少し思うところがあったので在宅勤務という物についてダラダラ書いてみる。

T・ブレイ氏、グーグルを退職へ–在宅勤務を譲らず – CNET Japan

私は昨年まで、ある大企業の特例子会社で在宅勤務をしていました。
その会社で在宅勤務をしていたのはほとんど障害者でした。
と言うか、障害者にも在宅勤務で働く道を開くというのが会社の方針だったので、雇用は障害者である事が前提でした。
在宅勤務の社員は全国にいて、自宅にシンクライアントPCを設置しネットワーク越しに他の在宅勤務社員とチームを組んで仕事に取り組んでいました。

「在宅勤務が会社を救う」にも書いてあるように、コミュニケーションツールとして、チャットとTV会議システムは備わっていました。
もちろん、メールも使っていました。

働き始めたころは、在宅勤務は通勤の苦労からも開放されるし、転勤の必要もないからいいなーと軽く考えていました。
障害を持っていても働くことができる、素晴らしい環境だと。

だが、実質はちょっと(と言うかかなり)違いました。

環境の不備

入社して初めてわかった事ですが、ホストPCがWindowsでした。デザイン系の仕事だったのでWindowsかよ!とちょっとビックリ。さらにフォントもOfficeのものしか入ってない。デザインするにもキーボードとマウスのみ。せめてペンタブは無いと厳しい。そういうところも会社として変だったのかもしれません。
もしデザイン系の会社でフォントもペンタブも無ければ在宅勤務だろうとなかろうと蹴ったほうがいいです。

相手の様子がわからない

仕事をしている時、ほぼ100%、PCの前から離れることができませんでした。
こちらがどんな状況であってもメールやチャットでどんどん作業の指示が入ってきます。
メールはまだ良いのですが、チャットが曲者です。少しでも返事が遅いと「あれ?いないの?」ってことになります。
要するにサボってるのではないかと詮索されることになってしまいます。
お腹の調子が悪いとき、トイレに少し長く篭っていたりしたら最悪です。
こちらの状況も相手の状況も、チャットでは見えないのです。伝わらないのです。
在宅勤務でなければ、「ああ、○○さんはトイレに行ってるんだな」とか「今日はちょっと顔色が悪いね」とかわかるのですが、在宅勤務では基本的に文字だけのコミュニケーションですので、そういう細かいところが伝わりません。

セキュリティ的に制約が多すぎる

先ほど言ったように、ほぼ一日中自宅のシンクライアントPCに張り付いて仕事、という感じでした。
こういう事を言うと、ノマドっぽい感じで環境を変えればいいんじゃないかと思われるのですが、セキュリティ上カフェで仕事とか、そんな事はできません。
VPNで社内ネットワークにログインできる端末は、自宅のデスクにドンと乗っかったPCのみだったからです。
もちろん、セキュリティは大事です。これが破綻すると会社にとっては一大事です。
ですが、一日中PCに張り付き、チャットを見逃さないように作業をするのは非常に辛いです。

余談ですが交通費がかからない代わりにPCの電気代は自分持ちです。
夏のクーラーの電気代、冬の暖房費も全て自己負担です。
まあ、これはそんなに苦ではありませんでしたが…。

コミュニケーションがとれない

何より苦しかったのはコミュニケーションがうまく取れないというところ。
本社は東京。
職場は自宅。
同じチームと言ってもメンバーは全国に散らばっています。
ちょっとした図などを見せたい時もいちいちエクセルやパワポで作って見せなければなりません。
机越しに話す、という感覚とはまるで違います。相手の反応が返ってくるのに数時間かかることもありました。
もちろんTV会議で話すことも出来ますが、ちょっと確認など取りたいと思っても、いちいち相手をチャットで呼び出し、会議室にログインするというのはけっこう面倒なのです。
さらにTV会議用のPCがダウンしたりするともうお手上げです。
FAXなどでやり取りできれば良いのですが、前述のようにセキュリティが非常に厳しかったので、認められていませんでした。
何しろ検証用のサーバーにもアクセスできないぐらいでしたので(笑)

あと、仕事の合間に雑談というのも普通の職場ではありますが、チャットでは難しくTV会議では誰も発言しようとはせず、結局よく話す人が1人で喋ってるのをただ聞いているという雰囲気でした。

気づいたら鬱状態になっていた

こういう環境で仕事をしていて、ミスをした時が一番やっかいです。
自分が作成した書類に不備があったり、エラーが出たりした時、何度もチェックしたはずなのに、と思うようになっていました。
1年ほど経ったとき、コミュニケーションに限界を感じ、気づいたら私はうつ状態になってしまいました。
病気休暇をとりましたが、結局退職となりました。

今回取り上げた書籍「在宅勤務が会社を救う: 社員が元気に働く企業の新戦略」にはコミュニケーションツールのことも書かれていますが、実際は非常に難しいです。
普通のサラリーマンがたまに在宅勤務を行うという場合は良いかもしれません。
大雪や台風などで通勤が難しい場合など、在宅勤務は有効な手段だとは思います。そういう点では積極的に導入すべきでは、と思います。
しかし、年中在宅勤務だとチャット程度のコミュニケーションツールでは、チームワークは表向きうまく行っているように見えるけど、そのうち崩壊します。
在宅勤務は会社にとっては良い手段かもしれませんが、社員にとっては必ずしも良いとは限りません。

在宅勤務の課題

私にとって在宅勤務が向いていなかったのは明らかにコミュニケーション不足なので、在宅勤務は大企業が全国展開で行うより、地域を限定して行ったほうが良い気がします。
大企業より地方の企業などのほうが小回りが利き、定期的に本社でのコミュニケーションもとれるでしょう。
そして雇用形態がけっして良くないという点。
在宅勤務社員は正社員にはなれず、有期契約社員という場合がほとんどでしょう。安い賃金で労働力を確保できるのは会社にとっては好都合かもしれませんが社員にとっては悲惨です。
在宅勤務が社員にとって本当に良いものか、企業は充分に考えて導入してもらいたいものです。

やはり人間というのは、同じ場所にいるという当たり前の事が、とても大事なのです。

【26日追記】
こんな記事も見かけました。やはりチームワークが必要とされる現場では在宅勤務というのは難しいと思います。
「人生で一番無駄なのは通勤」 在宅勤務は「企業と社員」を救うか

-雑記2014


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